サカナの、おはなし。

TAOLA
サカナの、おはなし。

読みものです。呼吸を忘れていた、魚のお話です。

真上から見た波打ち際
そっと、のぞいています。
みんな、個性的な色や模様で、きれいだね。
けんめいに、泳いでる。
口だけ、パクパク。
ちゃんと、息は、できているのかな。
よく見ると、手も足もある。
バタバタさせていないと、
沈んでしまうのかな。
だとしたら、
怖いよね。命がけだもの。
苦しいよね。水を飲むと、息が、できない。
いつまで泳げるのか、
誰も、教えてくれないの。
だから、今日もジタバタ、動かし続ける。
みんな同じ。それが、安心。
逆光の窓に伸ばした手のシルエット
本当に、そうかな?
勇気をだして、止まってみようか。
少しだけ、試してみようか。
……いや、やめておく。
それが正解なら、誰かがやっているはず。
だから、やらない。
また今日もジタバタ。
また明日もバタバタ・・
苦しくないふりをして、
平気な顔で、泳ぎ続ける。
それが、大人の泳ぎかた。
——でも。
さっきから、
だれかが、見ている気がする。
姿は、見えない。
声も、しない。
叱るでもなく、
助けるでもなく、
ただ、
だいじょうぶだよ、と言うみたいに、
いつか、そう言ってくれた、
だれかの、まなざし。
その日は、
雲ひとつない、澄み渡る空。
光があんまりきれいで、
その、まなざしに、背中を、そっと押されて。
今日こそは、見たくて。
水面を下から見上げた光
水面へ昇って、歯を食いしばって、
空を、見上げた。
ぐるん。
つられて、身体が半周り。
水面を、ぷかぷか。
おひさま、ぽかぽか。
……あ。
息はできる。
天国だと思った。
うん、僕は生きている。
そっと、吸って。
ゆっくり、吐いて。
もう一度、いっぱいに、吸って。
とめて。
……ふぅーーーーー、ぜんぶ、はきだす。
息をするって、こんなに温かいんだ….
生きてるって、それだけで。
このままで・・
ずっと。
この水面は、
静寂しじまに在ります。
夕暮れの浜辺
さあ、今日も顔を上げて。
いってらっしゃい。
——わたしも、そっと、目を上げる。